外壁塗装の艶選び｜ツヤあり？ツヤなし？同じ塗料の色でも外観が変わる艶の決め方

新築時、多くの戸建てでは外壁や雨樋を含む色の艶が実は3分艶（光沢度：10%～30%程度の落ち着いた艶）であるケースが多いのをご存知でしょうか？外壁塗装と聞くと色選びを想像しますが、同時に艶についても打ち合わせで相談される事になるでしょう。逆に艶の相談が何もない場合には「艶アリ」でセットアップされる可能性もありますが色によってはこの艶で印象が大きく変わってしまうのです。

新築時からor前回の塗装からいわゆる塗り直しをこれから行うわけですが、塗装の目的は家の劣化を防ぐための塗膜保護をするのが本来の目的です。そして外観、その色選びにはぜひ色の「艶」選びも想定しておきましょう。

最初に結論を申し上げますが、外壁塗装の色の艶は「好み」で選んで構いません。ですが、好みで選ぶ為にも、艶消しによって塗料自体の耐久性が落ちる理屈や艶自体の効果や艶加減、選んだ色と艶の関係などを知る事でより納得した形で艶を選べるようになりますのでぜひ最後までお読み下さい。

当社は相見積り2社以上から推奨（こちらをタップ）

塗料の艶とは？

いかに光らせるか – 艶を出す塗装こそ正義

本来、塗料は艶がある状態で作られます。つまり、塗料は艶があるものとお考え下さい。ですから業者側は「艶なし塗料」とは言わず「艶消し塗料」と呼ぶのはこの為です。艶なし塗料は存在しません。本記事では適宜使い分けをしております。ひと昔前では、ペンキ塗りを長く従事していると職人が行う塗装で『いかに艶を引き出すことができるか』に重点がおかれ、これが職人の技量の判断材料でもあったりしたわけです。ですが、昨今ではシックな仕上がりを目指す為に使われる「艶消し」という仕上げ方が流行ってます。艶消し自体は昔からありました。

艶ありの塗料を塗り、いかに光らせるか、ピカピカになるまで塗り上げろ、というような指導さえあった背景がありました。『塗膜が薄いぞ』『光沢がまだ弱い』『もっと塗ればもっと艶が出てくる』みたいなムードで、もし新人が塗れば、同じ材料で塗っても親方が全体だけをみて『全然だめだ！もう一回塗れ』みたいな感じです。全体の印象、というところを重要なポイントとしていたわけです。

十分な光沢＝塗膜が平らの証拠

ある一定のレベルの技量をこえた職人はそういった膜厚の判断ができるようにもなります。つまり、しっかり塗れた箇所とそうでない箇所の違いにしっかりと反応できるようになります。1回塗り、そしてやがて4回塗りなんか行うと、その塗り重ねていく過程では、目に見えない凹凸が減り、膜厚が平らになっていきます。平らになってきたところは光っています。その意味としては「目で認識できるレベルの光」が反射されている、太陽の光があたって反射した光が凹凸がないような状態で光が出てくるからより光っているようにみえるわけです。

膜厚良好・光沢良好＝機能性担保の証

塗膜が薄い状態でガサガサな凹凸がある状態では光が当たってもその反射された光を目でみたとしても艶があるんだけど、ない、それが段々塗り重なってきて「膜厚」が太ってくるとツルツルになってくる、そういった艶あり塗料での塗装作業をする上でのある種、指標でもありました。手で触っても、目がみてもツルツル、よし！これでお客さんに見てもらおう！みたいな感じです。そういう風に仕上げるほど、お客さんの家が良くなります。「光らせる」ことが目的ではなく、光るくらい塗った＝しっかりと機能性が担保される、という判断になるのです。

同じ色の中でも印象を変える艶加減

艶の種類

上記の画像の通り、艶を抑えていくと面の印象が同じ色であっても異なるのがわかります。すべての塗料で艶の程度が選べるとは限らないですが、以下が主な艶の加減になります。艶の尺度としてグロス値を表示しています。（グロス値とは、塗膜の光沢度を表す数値で、光沢度や光沢率とも呼ばれます。またその測定方法は、塗膜面に60度の角度で光を当て、反射する光の量をパーセンテージで表します。理論上の最大値が100%ではない為、塗料でグロス値が100%というのは存在しないとされています。）

• ①艶あり
  ※グロス値：70%以上
• ②7分艶
  ※グロス値：55～65%程度
• ③5分艶
  ※グロス値：30～45%程度
• ④3分艶
  ※グロス値：10～25%程度
• ⑤艶消し
  ※グロス値：10%以下

艶は大きくわけると艶あり、艶なし、ですが、その大まかな範疇として、グロス値70%以上が艶あり、10-5%以下が艶なしとされています。全艶100%は存在しません。

3分艶が人気のワケ

艶ありを避けたい人の中には艶の光沢感いかにもペンキ塗りました！の感じがあるの避けたり、3分艶にすることで色が抑えられた印象となり家全体に高級感の演出になるのが好まれている為です。当社でも水性塗料の3分艶～5分艶がよく使われます。

実は新築時の建材は3分艶が多い？

元々出来上がっている塗料に艶を消す成分を入れて作ってできたものはだいたい3分艶で構成されています。新築の時に使われている建材、外壁材や雨樋だとか新品の建材はほぼほぼ全部3分艶と思っていいでしょう。建売の現場（土地と家をセットで販売）においてもあまりピカピカ光った仕上がりのものは少ないでしょう。ただ、新築時で艶アリのものだと建材がモルタル外壁の場合がもあります。

耐久性が落ちる!?艶のない塗料

水性・油性に関わらず住宅用の塗料というものは単に色をつけるだけではなく、建材の保護を主に目的として開発されています。そもそも家が経年劣化するということの意味は雨や紫外線、沿岸部にお住まいでしたら塩害など、そういった環境によって生じるモノからダメージを受け、劣化するという事ですので、そこから建材を保護をするという事が塗装をする目的となります。特に紫外線による変化は熱変化によるものですから。太陽の光を反射させ、そのダメージを回避している論理ですので、職人の中には十分な光沢感を出すことが要と言っているのにはそういったわけがあるのです。逆に反射しない表面は反射しないのでそのままダメージを受ける事に理屈上なります。

上記でも述べましたが、塗料には艶があります。艶を抑えたものや、艶なしを求めるという事はそこにシリカのような艶消し剤のようなを入れていき、元々出来上がっている塗料を不純物にして塗布する、という事になります。作ってできたものはだいたい3分艶で構成されています。また、確認の必要はありますが、新築の時に使われている建材、外壁材や雨樋だとか新品の建材はほぼほぼ全部3分艶と思っていいでしょう。

艶消しする為の添加剤

上記に関連してさらに掘り下げてみます。例えばウレタン塗料でツヤをあえて抑える、そういった時に使うのが艶消し剤 (フラットベース)です。シリカを表面に混ぜて表面の凹凸をなくして膜をはることで「光の屈折」をなくします。光ってない様にするために「曇った膜」が一番上に来るようにします。ただし、シリカ自体にも大粒・小粒があり、そして耐久性があります。

不純物によって耐久性が落ちる仕組み

シリカの方が基本的には塗料に比べ耐久性が低いということになってますが、ここで考えて頂きたいのは、ツヤを抑える為に加えたシリカのような不純物は表面だけにあるのでしょうか？違いますね。当然、中にも入っていますので、耐久性が低い部分から壊れていく＝塗料にいっぱい穴が空いていく感覚、紫外線がより入りやすくなるので破壊が進みやすくなります。ただ実は、この件について厳格な検証結果が存在しません。チョーキングやグロス測定でもわかりません。当社含め、業者側の認識としては1割程度の違いがあると判断しています。

注意？艶消し剤だけで販売しているものは買うべき？

ここは業者など施工者側の判断によりますが、塗料に加えるものは慎重に判断されるのが基本ルールです。なぜなら不要な不純物は耐久性が下がる為、業者はその仕様変更に常に懐疑的であるはずでなければなりません。ですので追加する・使用する艶消し剤が何の塗料のベースになっているか、わからないと使わない業者もいます。信用できる業者といっていいでしょう。以下に艶消し剤をすでに混ぜて塗料として販売している塗料の紹介をします。

艶消し剤を混ぜた状態の塗料の例

昨今では3分艶が人気というのもありだいたいの塗料において艶消し剤を混入済みの塗料が売られています。以下はほんの一例です。

• ビーズコート
  ※スズカファイン
• パーフェクトトゥルーマット
  ファインパーフェクトトゥルーマット
  ※日本ペイント
• ボンフロンマットGT-SR
  ※AGCコーテック
• 超低汚染リファインシリーズ（3分艶オプション）
  ※アステックペイント

実は施工が難しい3分艶の塗装

艶消し具合の光沢感は部分的にムラがでるもの…？

上記の通り、艶消し剤や諸々の過程はすべて「目でみえる光の反射」を抑える為のものです。例えば一面が仕上がった後、その面の一部分が上手く塗れていなかったとします。そこでその箇所のみもう一度塗って仕上げると、その一部だけ厚くなりますよね。そうすると光の反射が他と異なる事になります。正面からなら同様に見えますが、横からみた場合の反射具合が変わってみえるのです。場合によってはシミのように見えたり…。つまり、施工が非常に難しく繊細さが求められます。一切手直しがない状態で完璧に同じ厚み（膜厚）にやるというのはどの業者もほぼ不可能でしょう。（養生などで何十回にもわけて塗布するなど通常の数倍の手間賃なら可能かも？）それに付帯部など細々としたところを塗って、ちょっとペンキを落としてしまった箇所なんかができてしまった際にはその場所の光の反射が部分的に変わってしまうわけです。ですので光沢感については多少のお互いの歩み寄りが必要となるでしょう。

艶ムラをできるだけ抑えたい場合

上記の通り、この艶ムラは技術だけではカバーできません。できるとしたら申し上げた通り養生をきめ細かく何度も実施する事でならできるかもしれませんが、完璧に均等の反射を求める場合、費用が高額になる可能性があります。あるいは、艶消しの塗料なのに、手直しが利きやすい塗料もありますが、これは塗料自体の特性によるものもあります。ただ、無機の骨材が入りの部材なんかはマットの仕上がりで味があるようにみえますが、汚れはつきやすいです。

塗料の色と艶の関係

例えば、塗料の色でブラウン色とクリーム色の2色を想像してみて下さい。艶具合によってどちらの印象が大きく変わるでしょうか？外壁は選ぶ色によって艶の印象の変化も異なります。濃い色を選べば選ぶ程、艶加減が非常に影響され、明るい色は艶の影響が少ない、ということになりますのでもし、次回のメンテナンスの塗装の色を明るい色で採用されるつもりでしたら、艶の影響があまりないので、ちょっとでも長持ちさせようと考えるなら艶ありで選ぶ方が良いと言えるでしょう。

艶アリ塗料・艶消し塗料の違いまとめ｜メリット・デメリット

ツヤあり塗料のメリット・デメリット

メリット – 艶あり塗料を採用した場合

• 高耐久性・耐候性
  基本的に艶があるほど耐用年数が高くなる
  ※理論上、艶があればあるほど純度が高く、高耐久性
• 汚れにくい
• 鮮やかな外観
  新築時の同じような輝き
• ほぼすべての塗料が艶ありで販売

デメリット – 艶あり塗料を採用した場合

• 艶は2～3年程度までしか続かない
• 安っぽい仕上がりに見える事も
• 塗料と外壁の種類によっては艶がうるさく見える
• 太陽光の加減により眩しく見える。

艶有りはピカピカとしているので、美しいと感じる外壁に変身させることができます。外壁材の種類がサイディングなら凹凸が強調されるでしょう。また、外壁塗装をした！と感じるのも艶有りです。新築のようなツヤツヤの外壁になりますが、3年も経つと目立たなくなっていきます。

ツヤ消し塗料のメリット・デメリット

メリット – 艶消し塗料を採用した場合

• 見た目や雰囲気に経年劣化がない
• マットで自然な仕上がりに演出
• モルタル等の外壁と相性が良い

デメリット – 艶消し塗料を採用した場合

• 汚れが付きやすい
  塗布した部分に不純物とのザラツキ面ができる為
• 塗料の種類やカラーが少ない
  ※塗料のバリエーションが少ない

外壁塗装を艶消し塗料で行うと、綺麗にはなりますがツヤツヤではないので、はっきりと塗り替えたような感じはしないかもしれません。また、ツルツルとした艶有りと比べてザラツキがあるので汚れが落ちにくいというデメリットもあります。上記の通り、艶無しは艶有り塗料の中に、艶を消すための添加剤を混ぜていますので若干ではありますが艶有りよりも耐久性は劣ります。ただ、それほど気にする程度ではありません。塗料メーカーの中には15年耐久性の場合、艶なしを選んで15年のうち半年程度早まる、そういった微妙な違いとして回答している塗料メーカーもあります。

ツヤあり・ツヤなし、結局どっちがいいの？

冒頭にも申し上げましたが、好みで決めて頂いて結構です。アイデアとして、例えば、家の前の塀の塗装について考えてみましょう。あまり艶々したものよりもない方が落ち着いてみえませんか？つまり材質に合わせた艶加減を選んでいく事が塗り替え時には違和感がない、綺麗にまとまっていくのではないでしょうか？ですので、まずは何の材質に塗布するのかに着目してみて下さい。そして塗料の色が決まった後は、その採用した色と家の構造、直射日光の位置関係にあるかor否か、そして壁などの材質、近隣の建物との間隔などを環境も考慮して「艶」の加減を選択する事が大切です。

また、申し上げたように、艶を落とせば落とすほど、塗装が難しくなります。つまり、「継ムラ」の問題です。塗装が重なる部分とそうでない部分では膜厚が異なる為、光沢感が増えます、つまり艶が異なります。3分艶は人気ですが、ムラが出やすくなるので塗装が難しくなりますのでその点だけ、業者としっかりと話し合う事が大切です。業者によっては艶ありに比べ、3分艶などで施工する場合は1.2倍程度、若干割増しで人工（職人の工賃）を計上する可能性があります。すべては総合的に判断した作業の難易度に応じた話になっていくはずです。